「おんな城主 直虎」ノベライズ三巻 感想 (ネタバレ)

※ネタバレですので、お嫌な方はこちらでお引き取りくださいませ。
※歴史に詳しいわけでもなく、読解力も文才もない、気持ちの整理のためのメモです。











おんな城主 直虎 三

おんな城主 直虎 三

ネット注文していたため、発売日には手元に届かず、史実は調べていたので政次の最期がどうしても気になり発売日に書店で32、33話を流し読みしました。「どんな最期になるのか」「直虎への想いは告げるのか」といったところが気になって読んだのに、まさかのなつへの求婚というサプライズ展開があまりにも衝撃的で……さらに、なつに「膝枕」という文字にも二度見してしまうほど驚かされました……あの政次が膝枕とは……

覚悟はしていた「政次の死」がノベライズで確定してしまっただけでも辛いのに、それに加えて全く想像できていなかった「なつへの求婚と膝枕」がどうにも納得できず、手元にノベライズが届くまでの2日間は本当に気落ち致しておりました……流し読みだったので政次の台詞もしっかり読めていなかったというのもあるのですが。直虎を一途に想う政次が大好きだったけど、そんな政次をさりげなく支えてくれていたなつのことも大好きだったので、不憫な政次を見ていて「なつと一緒になった方が幸せなのでは」と思ったこともあったはずなのに、いざそうなるとこんなにもショックだとは……自分は政次と直虎が好きだったんだなと思い知らされました。

その後、手元にノベライズが届き、あんなに楽しみにしていたはずなのに読むのも怖くて気が重くて、それでも現実と向き合おうと決意して読み始めました。32話と33話がどうしても怖かったので、気持ちを落ち着かせるために25話の録画を再生しながら読み進めました。辛くなりそうになっても25話の二人の絆を見て安心できるので、結果的にこれがすごくよかったと思います。もしこれからノベライズ3を読まれる方にはおすすめします(笑)

そんなこんなで、改めて心して読んでみると1回目にきちんと読めていなかった部分があったことに気付き、色々とだいぶ印象が変わり、ようやくノベライズを受け入れることができました。

なつ

なつとのことはある意味、政次の死以上に衝撃的だったかもしれません。ノベライズいちのサプライズかと。私はノベライズを読むまで、政次となつのシーンが大好きでした。政次の真意にいち早く気付き、そっとそばで政次を想うなつと、なつの前だけでは仮面をかぶることなく柔らかい表情を見せていた政次、ふたりの家族の絆に温かい気持ちになっていました。
それが、ノベライズを最初に流し読みした後は、そんな気持ちが急になくなってしまい、途端になつに対して好意を持てなくなった自分がいました。報われたのはなつだけではないか……と思ってしまって。例えるなら、友達とずっと一緒に憧れていた手の届かない先輩が、ある日突然友達に告白してきて付き合うことになった時、のような気持ち(笑) なつのことを一緒に政次を陰で応援している同志のように思っていたからかもしれません。膝枕の時に碁石を見つめる政次に「今はなしです」と言う台詞もどうにも受け付けなくて……

でも、改めて落ち着いて読み進めると、なつに非などもちろん1ミリもなくて。なつを嫌いになる要素などなかったことに気付きました。
まず、「一緒にならないか」と言われた時も、政次の直虎への想いはもういいのかとわざわざ確認するのも、政次が後悔しないようにという優しさでもあったと思うし、「かたちばかり」とか直虎への唯一無二の生涯変わらぬ愛を散々目の前で語られるという、デリカシーの欠片もない求婚スタイルだったにも関わらず、そんな不器用な政次の想いを「仕方ありませぬね」と言いながら素直に喜ぶなつがいじらしくて可愛いくて。
膝枕の碁石のくだりも「今はなしです、今“だけ”は」と、もう政次といられるのは最後かもしれない場面でさえも、政次にとって自分は全てではなくていいという謙虚さも感じられて、ほんのささやかなわがままがなつらしいなと思えました。こんなささやかなわがままさえ受け付けなかった流し読みした直後の心が狭すぎた自分が情けない(笑)

というわけで、一瞬嫌いになりかけたりもしましたが、なつはやっぱり大好きです。しのと対照的に、自分の想いが届かないからといって誰かを恨んだりせず、直虎に対して嫌な気持ちがないところがやはり素敵だなと。直盛から与えられた役目を果たそうとする忠義深さや、立場をわきまえつつも時には目上の者にも物申す芯の強さも好きなところです。例え自分が報われなくても好きな人の支えになりたいと思ってしまう性分は、政次ととってもよく似てるなと思います。

政次

史実は調べていたので、処刑されることは知っていましたが、ドラマではなんとか生き延びてしまうミラクルもあっていいのでは……なんて淡すぎた期待も虚しく、史実通りバッサリ処刑となってしまいました……最初に流し読みした時はやはり、処刑されたことも去ることながら、何故最後になつ!?と思ってしまって全く納得がいかず悶々としました。でも、政次についても改めてノベライズを読むと、求婚の場面でも自分の最期の場面でもおとわへの愛がこれでもかというほど溢れ過ぎていて、死んでしまうのは悲しいけど、最期まで政次にとっておとわが全てだったことが嬉しいやら切ないやらで、引くほど泣きました。

なつへの求婚の場面。よくよく台詞を読むとまぁ~ひどい(笑) 相手がなつではなくしのであったら、その場で叩き斬られていたのでは(笑)
あんなにもはっきりとおとわへの想いを語る政次が見られるなんて。それが本人の前ではなく、なつの前というのがなんとも切ないのだけど。政次はおとわをいつまでも幼なじみのおとわとしてタメ口で叱りつけたり、打掛けの裾を踏んだりもする一方で、決して自分なんぞが軽々しく手をつけてはならないというように、もはや神格化していたのだなと思います。一生さんが公式ガイドブックのインタビューで直虎のことを「まるで神のよう」と言っていたのを、最初に読んだ時は大げさに思えたのですが、今となってはおっしゃる通りだなと。

それとは別になつを大切に思う気持ちも、大きさは違えど心からのものだったと思います。色恋のようなものではなく、家族への愛情のような。なつと過ごす最後に膝枕をして直親の愚痴をこぼしたのも、死を覚悟して子供に返ったようなものだったのではないかと思います。妻に甘えているというよりは、母に甘えているように私は感じました。

龍雲丸が助けに来ても自ら処刑されることを選んだ政次。政次が言うように自分が逃げたところでまた井伊が危険にさらされるというのは確かにその通りかもしれないけど、もはや井伊の誰もが政次の死は望んでいなかったはず。これまでどんなに危ない橋を渡ることになろうとも、おとわの好きなようにとしてきた政次が、最後ばかりはおとわが怒るのをわかっていながら、「それこそが小野の本懐」とおとわのため井伊のために自我を通す。次郎様が井伊のために還俗しないと決めた時も、直親を振り切ってカビた饅頭になることを自ら選んだ。たとえ愛する人がそれを望んでいなくとも、井伊のために清々しくその身を捧げる。ふたりの信念はずっと同じだったのだと思います。

自らの命をもっておとわを守る。それが政次にとって本懐だったことは確かであろうし、政次が清々しくこの世を去れたのなら、処刑という悲惨な最期も受け止めるしかないかなと思いつつ、政次のばかーー!という気持ちもやはりあります。頭と共に逃げていたら……陽の下で碁を打つふたりが見たかったです。

辞世の句、生涯消えぬと言ったおとわへの想いがここに全て詰まっているようで、尊すぎて言葉では言い表しようがありません……

史実では政次が死後、悪霊となって現れたそうですが、ぜひドラマでも死してなおおとわと井伊を助ける政次を見てみたいです。NHKさま!

直虎

政次との最後の対面があんな感じになるとは思っていませんでしたが、やはりふたりの関係は直接的な触れ合いや言葉ではなく、心の奥深くで魂で繋がっている絆があるということなんだろうなと。むしろそっちの方が深くて尊い。それはわかるんだけど、最後だけは冷た家老以上の何かがあったらいいのに……なんていうあまっちょろい考えを決して許してはくれない森下さん(涙)

直虎は最後まで政次のことを一人の男としては見ていなかったと思っています。切ないけど。でも、それでも政次と同じように色恋の愛情を越えた大きな大きな想いが政次に対してあったはず。それをうまく言葉で表現できないのですが。何ヵ月も死を受け入れられないくらい政次は直虎にとってなくてはならない存在だったのは確かだと思います。

政次が子供を殺めてしまった時、頭に牢での政次との会話を聞いた時、『頭に何がわかる!』と珍しく頭を突き放す直虎が好きです。政次のことを誰よりも知っているのは自分だと、政次との絆には例え頭であっても立ち入ることはできないと言っているようで。
もちろん、最後に一緒に囲碁をした場面も大好きです。政次に領主として真に認めてもらえて嬉し泣きしてしまう直虎。政において政次のことを信頼し尊敬もしていたのだなと思います。ふたりで、いや三人で井伊谷を守りきり、井伊と小野もひとつとなり幸せな未来がもうすぐ訪れる……この先の結末を思えば切なすぎるけど、希望に満ち溢れた幸せな時間。

政次が自分に対して幼い時からずっと好意を抱いていたこと、直虎は気付いていたのかどうかが私にはうまく読み取れず……龍雲丸に『あの人にとっての井伊ってのはあんたなんだよ』と言われた時、辞世の句を読んだ時、直虎は政次の想いをどう受け止めたんだろうというが気になっていて。でも何回も読んでみて、龍雲丸に話を聞いた後の『われは何をすればよい?今さら、そなたに何を……』という直虎の台詞、政次を助けるためにどうすればよいのかという意味だと思っていたのですが、「今さら」の部分が政次の想いを知っての言葉なのかなぁと思ったり。でも違うのかなぁと思ったり。

龍雲丸

牢にいる政次を助けに来てくれた時『井伊のために誰よりも駆けずり回ってきたのはあんたじゃねえか』と言ってくれたのが嬉しかったです。政次も龍雲丸のことを認めていたけど、龍雲丸もまた政次のことちゃんと見ていてくれてわかってくれていたんだなと。政次が直虎への最後の伝言に何も言わなくても、ちゃんと政次の想いを汲み取って精一杯直虎に伝えてくれた。頭、ほんといいやつ。政次なき今、直虎のことをつかず離れずの程よい距離感で支えてくれたらいいなと。あんまり仲良くされるとときめくというよりもやもやするので。

大河ドラマおんな城主 直虎

高橋一生さん演じる政次に魅了されて以来、ドラマ自体にもすっかり心を奪われ毎週夢中になっております。登場人物一人一人の心情の変化や、複雑な感情、人間の多面性が丁寧に描かれているところがこのドラマの最大の魅力だと思っているのですが、それを表現されているキャストの皆様が本当に本当に素晴らしくて…!どの役にも1つのイメージだけではない違う面があったりして。いい所もあれば弱い所もあったり、そうゆう人間味がどの役にも感じられてみんな大好きです。

政次を見ていると、演じているのが高橋一生さんだということを忘れてしまう時があります。頭から指の先までもう政次にしか見えない。ご本人がよくおっしゃるように、まさに「そこに居る」。役の人間のその場面でしか出てこない表情を繊細に表現されていて、その表情が無限にあるように感じるというか、演じているというより役の人間の感情が表情に涌き出ているように見えます。一生さんのお芝居は作品をより輝かせる力があると思います。

また、印象に残る音楽も、ひとつひとつの場面を時には盛り上げ、時には寄り添うように作品を彩っているのが素敵。あと、画が美しい。役者さんの瞳が光で透けるような撮り方の場面がすごく好きです。


後半だんだん雑になってしまいましたが……
つまるところ、「おんな城主 直虎」はすごくおもしろしいし、高橋一生さんのお芝居が魅力的すぎる。ドラマを見ていない方に宣伝してまわりたいくらいです。